活動ブログ
2018.7.24 ブログ

NHKの「赤ちゃんを救う胎児治療」を観て思うこと

文責:林伸彦(代表理事)

NHKで先月放送された胎児治療に関する番組へのコメントです。

NHKダイジェスト記事(外部リンク)

出生前診断が命の選別につながると強調されている風潮のなか、治療のための診断でもあるということを社会に発信することは非常に意義深いと思っているのでシェアします。どうしても気になった点が2つありました。
※ 報道への批判ではなく、ニュアンスに関して個人的見解を補足した上で記事をシェアしたいと考えたまでです。

<1点目>

妊娠中におなかの赤ちゃんの病気を見つける『出生前検査』の技術は飛躍的に進歩していて、人工妊娠中絶につながると懸念されています。世界的には、こうした懸念の解決策の1つとして『胎児治療』が進歩していて、イギリスなどは選択肢の1つとして、すでに一般に浸透してきているといわれています。

・・・とありますが、これは本当なのでしょうか。
確かに、胎児治療という選択肢があるから、「産む」「産まない」という二択ではなくなっています。治療が選択肢としてあれば、中絶をしないという方がいるのも事実です。

しかし、イギリスにおいて胎児治療は「中絶を避けるため」にあるわけではありません。

そもそも多くの国で、赤ちゃんの病気や障がいを理由に妊娠出産を諦めるのは、親の権利・子どもの緩和ケアとして合法化されています。イギリスにおいても妊娠24週まで認められていて、妊娠24週以降も、致死的な疾患や重篤な障がいを持つ場合には中絶が認められています。このとき、中絶をした両親が「悪いことをした」と責められることはなく、むしろ一生懸命向き合ってよく乗り越えたね、赤ちゃんも精一杯頑張ったよ、と声をかけられるような社会の風潮です。病気や障がいがあるから産み育てにくいと考える人が多いのは悲しいことですが、中絶そのものは法的にも社会的にもサポートされています。

そのため胎児治療は、安全に提供できる医療としての「ひとつの選択肢」に過ぎません。胎児治療は中絶を避けるための選択肢ではなく、「そのまま様子をみること」「胎児治療をすること」「妊娠を中断すること」このどれもが同じレベルでの選択肢として家族に提示されます。

<2点目>

『胎児治療』は母体の安全管理も含め高い技術がいる新しい医療なので、国内でできる施設は限られています。

・・・というのを見ると、あたかも治療施設が少ないことが胎児医療の課題のようにも見えます。しかし実は治療施設は、日本の妊娠数から考えると十分あります。

むしろ課題は、「治療施設はあるのに、治療できる時期に赤ちゃんの病気や障がいが見つからない」という点にあります。

出生前診断が全妊婦さんに提供されてない現状では、これは止むを得ません。

<まとめ>

中絶を避けるのが目的であれば、胎児治療の普及よりも、出生前診断全般の廃止をする方が得策です。

現時点で、日本では全妊婦への出生前診断を行うという流れにはなっていません。そこで胎児治療を理由に出生前診断を普及させると、救われる命よりも失われる命の方が多くなる可能性があります。なぜなら多くの場合は胎児治療という選択がなく、また胎児治療の多くは、障がいをなくすためではなく軽くするためのものだからです。

結局、病気や障がいがあっても不自由なく暮らせる社会システムを作らない限り、胎児治療は中絶を避ける策にはならないと考えています。

しかし出生前診断全般を廃止してしまうと、早期に発見すれば救えるはずの命を見つけることができないという皮肉的な状況になります。

出生前診断をするしない、という議論ではなく、どのような出生前診断が倫理的なのか、診断後にどのような選択を提示すべきなのか、診断後に家族が不安に感じることは何で、どうしたらそれを軽減できるのか、それを議論すべき段階にあると思っています。

中絶という選択肢を奪うのではなく、しっかり命に向き合ったうえで、どんな子でも自信を持って生み育てられると思えるような社会を作るのが正しい道なのではないでしょうか。

ご意見あればお待ちしています。info@fab-support.org

 

PAGE TOP