大阪府豊中市教育委員会視察報告

視察日時:2019年8月21日

視察メンバー:北村、倉石、室

              

1.医療的ケア児の現状と運営組織について

1)医療的ケア児の⼈数と医療的ケアの内容

 小学校 7校、中学校 2 校

一番高度な医療的ケア:気管切開・人工呼吸器

2)現在の運営組織に至る背景

大阪は人権教育の歴史が長く、医療的ケア児だけではなく在日朝鮮人やひとり親など色々な状況の子どもたちも住んでいるところの学校で一緒に学ぶという人権教育が40-50年の歴史がある。特に豊中は昭和50年代からそのような動きが活発で、共生社会について盛んであった。看護師が配置されたときは、医療的ケア児を含む障がいがある子は地域の学校に在籍していた。看護師が配置されるまでは普通小学校の教員が経管栄養ぐらいは対応していたが、保護者の要求や医療的ケアが高度になってきたため、平成15年に看護師を教育委員会に配置した。豊中の場合は障がいの有無に関わらず、居住地地域での就学が大前提である。そもそも医療的ケア児が「来る、来ない」という議論はなく、普通小学校に来ることが前提であった。学校の先生が人工呼吸器の子どもへの教育の素地がある。

3)組織の主要メンバーの職種と役割

 市立豊中病院で採用されていた看護師が、児童生徒課支援教育係教育に正規職員の看護師として配置されており、現在は3名。非正規看護師の看護師は16名配置されている。

医ケア検討会には市立豊中病院小児科部長、学校医、児童生徒課支援教育係主事、児童生徒課支援教育係看護師で構成している。

2.学校看護師について

1)学校看護師の雇⽤形態と役割、人材確保方法、学校への派遣の⽅法と体制

①雇用形態

市立豊中病院で採用されている看護師が、役所内の人事異動で児童生徒課支援教育係教育に正規職員として配置された。現在は正規職員の看護師を3名配置している。

非正規職員の看護師は16名配置されており、主に非正規職員の看護師が小中学校を巡回し医療的ケアを実施している。

正規職員の役割:保護者との調整、教員との調整、主治医との調整(学校のスタイルを医師に理解してもらい、就学に沿った指示書を出してもらうよう医師と調整をする)、看護師との調整、事故時などトラブル対応、研修会の企画・調整、予算確保、文科省に課題を提案。      

非正規職員の役割:学校で実際に医療的ケアを実施。研修会や勉強会に参加。学校内での教員との連携。     

※指導的立場や調整役の看護師を配置することが重要であり、各役割を明確化することが重要である。

②人材確保方法

非正規職員の看護師は看護協会のナースセンターやハローワーク、新聞の折り込み広告や学校での求人チラシの配布で人材確保している。

病院経験がないと医療保険の仕組みや病院との調整ができないため、看護師の条件は臨床経験1年以上にしている。非正規職員の看護師の時給は1612円、夏休みは勤務がない。

③看護師派遣方法

平成19年までは固定配置だったが、離職率が高く、H20年から「巡回型」にした。また「巡回型」にしたのは、複数で対応するためや一定業務量にするためでもあった。

一人の看護師が担当する学校は、1日多くて2校である。呼吸器は通常は看護師2人体制にしており、導尿・注入などは1人体制である。校外学習に関しては看護師5人体制である。

自転車、公共交通機関などで巡回している。

2)ケアに必要な技術や知識をどのように維持しているか

 入学当初、保護者に学校に来てもらい、学校で保護者から医療的ケアの技術のレクチャーを受ける(呼吸器のお子さんでだいたい1か月)。宿泊を伴う校外学習がある場合、ナイトケアのレクチャーも保護者に学校に来てもらい実施する。

また先輩の看護師が新人の看護師と一緒に学校を回り、医療的ケアの技術や教員との連携・調整などをレクチャーする。

各学校に同じ形式のカルテや、統一されたマニュアルも用意されている。

また豊中市内の病院や施設で研修や看護師同士の学習会も開催している。

ケアの手技はすぐ獲得するが、教師とのやり取りのコツや情報交換の運用のルールに時間がかかる。

3)学校看護師のサポート体制(トラブル時、困った時等)

教育に連動しているため、教育の中の事故に看護師が巻き込まれる可能性が多いため、事故時やトラブルの際の責任の所在は教育委員会となっており、国家賠償責任法で豊中市が対応する。

また直接関わっている非正規職員の看護師に苦情や責任がいかないように、正規職員の看護師が保護者に対応し、非正規職員の看護師のフォローにあたっている。教育課の正規職員の看護師が非正規職員の看護師の相談を受けフォローを行っている。

4)学校職員との連携の実際

 教員が児童の体調の判断を行う(授業を受けれる体調かどうか、吸引の必要性など)ため、教員が体調の判断ができるように、看護師が教員へのフォローを行う。

 郊外学習のときは、校長・担任が現地の医療機関を手配し、診療情報提供書を現地の消防と医療機関に受け入れ可能か連絡する。

5)学校看護をどのようにとらえているか

学校看護とは学びを支える看護である。義務教育の中で学びの柱があって、学校に看護師が入る意味があるため、看護師が教育を理解することが重要である。

また学びの柱を先生が考えていないと看護師が行く意味がないため、教員に学びの柱を立ててもらう。教育の風土を理解し、看護師としてアセスメントの力と融合をすることが重要である。

6)医療的ケア児の受け⼊体制

学校内の体制については支援教育コーディネーターを中心に、校内で組織的に課題に対処し、必要に応じて校内会議を開催し、内容に応じて市教委と連携する。

医療的ケアの子どもの情報が市へ入ると、学校での医ケアの体制について正規職員の看護師から保護者へ説明する。就学先の決定については,本人保護者の意向を最大限に尊重するとともに,居住地校区の小中学校への就学を基本としている。

7)学校看護師のやりがい

看護師がいることで子どもは学校に来れるという存在価値を感じながら、看護を出しすぎないことが重要。看護が入ることで子どもが学校にいける、行事に出るこができたことがやりがい。医療的ケア児がいることで周囲の子どもの成長を見ることでも、看護の仕事の意味を見出している。