King’s college Hospital訪問

参加日時:2018年10月25-26日

文:對馬朱香(助産師)

ロンドンにある国営の大学病院、King’s college Hospitalを訪問しました。

国営の病院では、妊娠初期と中期の胎児健診(King’s collegeでは後期も)と胎児治療が無料で行われています。世界中の医療者が見学や胎児診療の研修を受けにきており私たちの見学も快諾していただきました。見学に際し、はじめに守秘義務や情報開示ルールについての誓約書にサインし、診察と手術を見学しました。

現在、当法人代表の林がKing’s college Hospitalに勤務しているので、午前中は林が日本から来ていた助産師へ向けて、イギリスでの胎児健診の仕組みや、そこに関わる助産師の重要性などについてプレゼンしました。英国の助産システムは日本と異なるものですが、切れ目ない支援をするためには助産師が必要不可欠であることを感じ、助産師一同奮起しました。助産師の専門性の高さや、自分たちで判断することの多さ、責任感の強さなど、身の引き締まる思いでした。

その後、胎児健診の様子を見学しました。健診は2人体制で行っており、なにかあれば胎児科コンサルタントに診てもらえること、必要であれば検査や手術もできる体制があることなど、胎児を診るシステムがしっかりしていると感じました。

妊娠初期と中期のエコーでは、1人45分程度かけてしっかり診ていました。赤ちゃんの健康に問題があるのかどうか、それは治療できるものか、緩和ケアが考慮されうる状態なのかなど「赤ちゃんを診ること」と、母親の妊娠高血圧腎症や早産のリスク評価など「母親を診ること」の両方がなされていました。家族と受診している妊婦さんが多く、エコーを見たり説明を聞いたりしながら、顔を見合わせて微笑みあっている様子は、見ていて幸せな気持ちになりました。ローリスクの妊婦さんは、妊娠期間を通して2回(もしくは3回)のエコー検査で良いため、付き添いの人も一緒に来やすいと思います。また、赤ちゃんになにか気になる点があってカウンセリングを必要とするときでも、夫婦で共通認識を得て一緒に考え話し合えるのでよいと思いました。


初期と中期でしっかり時間をかけてリスク評価をし、リスクが低い妊婦さんはかかりつけの助産師または医師に診てもらい、リスクが高い妊婦さんはそれぞれの状態に合わせてスケジュールが組まれるという仕組みは、日本とはまるで違うものですが、ローリスクの妊婦さんたちは、コミュニティでかかりつけ助産師と十分に関わることができるし、ハイリスクの妊婦さんは、より重点的に診てもらえる仕組みだと思いました。


胎児治療もマジックミラー越しに隣の部屋から見学することができました。”胎児治療”という言葉だけ聞くと、どのようなものか具体的な想像がつかず、手術室で厳重な装備や大掛かりな機器を使うような手術を想像してしまっていました。しかし実際は、それまでエコー検査をしていた部屋で行っていて、治療自体はほんの10〜15分程度で終了し、妊婦さんはそのまま帰っていきました。日本では羊水検査の後、数時間は安静にしてから帰宅するので、治療後にそのまま帰っているのには驚きました。

胎児をしっかり診る仕組みが普及すること、胎児も適切な時期に受けられること、家族が赤ちゃんの状態を知ることで、自分たちと赤ちゃんにとっての最善の選択(治療や出産時期、出産場所、看取る、ということなど)ができるようになること、そしてどのような選択でも社会に受け入れられ支援されること、これらのことを実現していきたいと強く思った日でした。