米国フィラデルフィア訪問


文:林伸彦(代表理事)

訪問期間:2015年9月17-24日

主な訪問先:フィラデルフィア小児病院(CHOP; Children's Hospital Of Philadelphia)

                22q and You Center

日本学術振興会科学研究費の補助を得て訪問しました。


22q11.2欠失症候群

22q11.2欠失症候群は、21 trisomy(ダウン症候群)についで多い染色体疾患です。1/300~1/3000人と珍しくないにもかかわらず、社会的に認知が乏しい疾患です。

心血管異常、口唇口蓋裂、免疫不全、低カルシウム血症、低身長などなど多様な症状があります。出生後早期より、手術のみならず、発語・嚥下訓練、ワクチン接種のタイミング調整、Ca補充、抗てんかん薬、成長ホルモン補充などが必要となります。これらの適切な治療が行われていれば、よりよい成長発達が期待できるとされています。

日本では、22q11.2欠失症候群に限らず、各科の治療は高度にもかかわらず、「その子」や「その家族」、あるいは社会全体をサポートする体制が欧米に比べて未熟だと言われています。



家族会の存在

現在、この疾患に関わる家族たちを支えているのは、様々な形の「家族会」です。私自身、この1年間、少しずつですが色々な家族会の方とお話をさせていただきました。独自のSNSなどで互いの情報を交換しあったり、定期定期に会報を配信したり、その内容も家族自身の声や医療者の声など多様な内容があったり、正直それは想像以上に洗練されたものでした。

家族会の素晴らしさに感銘を受けるとともに、医療者としてもすべきことがもっとあるはずだと考えるようになりました。新潟県立看護大学助教でもあり当NPOの理事でもある北村千章が、ちょうど同じ様な想いで3年間の研究をスタートしたため、研究協力者として、関わらせてもらえることになりました。


研究という視点

・患者家族がどんなことに困っているか(あるいは困っていないのか)

・医学的にどんなケアが、その子・その家族にとって最適なのか

・社会へどのように疾患の認知を広めていくべきか(あるいは広めないべきなのか)

という大きな3つ疑問を持っています。

こんな根本的なことも、答えが見えていないのが現状です。


そのために、日本にどれだけの患者がいるのか、どんな医療的・社会サポートを受けているのか、等を国内で調査するのと同時に、海外視察を行うこととなりました。



フィラデルフィア小児病院

欧米では、22q.11.2欠失症候群に限らず、様々な疾患において、出生前から生涯にわたり社会的サポートが充実していると聞いていました。とりわけ、フィラデルフィア小児病院では、世界に先駆けて22q11.2欠失症候群のサポートセンターを立ち上げ、世界中から人が集まっています。

今回我々は、新潟県立看護大学の北村千章・Simon Elderton、NPO法人親子の未来を支える会の林伸彦、患者家族である麻生さん一家とともに訪問を計画しました。

遺伝カウンセリング、言語聴覚、小児発達、産婦人科、循環器科、など様々な専門分野の方が、それぞれ時間をかけてプレゼンしてくださり、議論する機会を得ることができました。

それぞれのメンバーがどのように連携して家族と関わっているのか、これまでの20年間にどのようなステップを踏んできたのか、などを学びました。チームの中には患者家族も含まれており、病院のあり方自体が日米ではだいぶ異なるのだと改めて感じました。

学んだ具体的内容については、研究報告の際に改めて還元したいと考えています。

当然、日米では社会的背景や根本的な価値観・宗教観など、異なる部分が多数あります。日本の良さを活かしつつ、どうしたら日本でも「多様性を理解しあって、病気や障がいがあっても隔離されずに平等に社会参加できるようになるか」を改めて考えさせられました。


下の動画はフィラデルフィア小児病院がYoutubeで公開しているものです。

病気の啓蒙・助けを求める人に対する門戸の広さなど、見習うべき点が多々あると感じています。

最後に、体調が不安ななか一緒に旅をしてくれた麻生さん一家、非専門分野であるにもかかわらず多量の英語論文を分析し、当日の通訳を担ってくださったSimon先生に、深く感謝しております。ありがとうございます。


記載:2016年1月6日